MY TATTOO TOUR 其の六 「ボルドーのアート編」
「ボルドーのアート編」
自分自身、仕事や活動に対して、特にアート、アーティストを自覚していることはあまり無い。
日本での刺青師で在るゆえなのか、とにかく自分の作品が表現あることにも自覚は薄い。
確かにアート=芸術という意訳であれば確かに日本の刺青、タトゥーには実感は遠のいていく。
たかが言葉のハナシなんだが、この旅ではそんな言葉が重要な場面が多々あったのだ。
自分も、「ワシの刺青は所詮チンピラ仕事の一環でっせ。」ってニュアンスは嫌いでは無いのだが、
「ワシの刺青はそんなアートみたいなチャラいモンやおまへん。伝統刺青やさかいに。」
つって、アート性を蔑む風潮もどうかって思う。
そういったものは現代美術、モダンアートの分野だと認識しやすいのだが、
表現≠伝統文化とか、再現≠アートとかって居直って線引きするのも、
元来の目的ではなかったはずだし、定義付けられても無いはず。
「守破離」って言葉があるが、守り、破り、離れると段階を経て精進を重ねていく。
「アート」が「守破離」でいう「離」での次元でしか存在できないのであれば、
一見、アート性は認めているものの、最終的に求め到達するもので、今は精進ってのは
目の前の高尚さに対峙出来ず怯んでいる事に陥りやすいように聞こえていた。
そして、そんなヒネたマッチョイズムな意見にも違和感を感じていた。
自分は適当でデタラメな野郎なんだが、
製作過程でのモチベーション、テンション、またそれに携わる経緯などがとても大事で、
例えば下絵を描いたりするとき、刺青の施術過程、またそれについて考えている時間などに、
つまりは製作過程にアート性なるものを実感していた、って事が正直多々ある。
そして発表(表現)、第三者のリアクションってのは二の次に思う事もあった。
今回の旅で経験した事、刺青や個展での出来事、他彫師やアーティストとの交流で感じたのは、
絵の意味知らずとも、まず形状にリアクションがあり、色、質感にリアクションがある。
そして受け取り側は全く伝統、絵に媚びずに様式美を感じ取っている。
そしてスタイルとして解釈せずに、まずそこに「個」を求めてくる。
自分自身、勝手に感動してしまっているハナシなんだが、(まあ面倒くさい事を書いているのだが、)
「アートであるか否か」とかって事ってか「アートって何」って事を今更ながら
「どうでもええわ」ってしたくなくなったのだ。
ボルドーのストリートアート
休業日にマチューにボルドー郊外のDARWINというところに連れて行って貰った。
ダーウィンは、なんというかストリートアートの複合施設みたいなところだろうか。
かつては軍用私設だったらしく、かなり広い敷地だった。
中にはいくつものスケートパークがあって、当日はスケーターの大会みたいだった。
スケーターも小学生から高齢者まで、コンテストの参加者もかなり多い。
そして数々のグラフィティアートがあり、当日もグラフィティーライターのライブペインティングがあった。
巨大なグラフィティー、とても迫力があるし楽しそうだ。
その建物の中にはアパレル、カフェ、リサイクルショップなど様々。
なんと、タトゥースタジオまで!
ダーウィン内のTETRODON TATTOOはコンテナを利用したスタジオだ。
ボルドーの建築物はさすが世界遺産だけあって、歴史ある石造りは雰囲気がものすごくある。
そんな由緒ある街にもグラフィティーアーティストが沢山いる。
KUB (クビ)氏
ボルドーのモダンアート
BETASOM Base sous-marine
ボルドーに滞在中はマチューに美術館によく連れて行ってもらった。
さすがフランス、芸術の国だけあって、美術館が多い
実は自分は近代美術、現代美術の分野には疎く、抽象画なんか理解できた例がない。
今まで、まど・みちおの抽象画に感動した事があるが、今まで感銘を受けたのはそれくらいだった。
ただ、さすが欧米ではアブストラクト、前衛的なヤツをタトゥーにて実践してたりする現状だ。
見る分にはすごい、って思えるのも沢山あるが、
それらには呪術的意味やメッセージなどを含ませているものが多いと思う。
そして、錯覚効果やサブリミナル的なものを目的としているものもあるとは思う。
でも、紋様として、ただ純粋に装飾としてってシンプルな解釈が許されるのであれば面白いものが多い。
ボルドーで通った美術館はほとんどがモダンアートの展示や個展だった。盛んなんだろう。
Base sous-marine の内部
Base sous-marine は第二次世界大戦中のボルドーの旧潜水艦基地の跡地であり、
現在はモダンアートの展示や音楽コンサートなどで使用されてたりするらしい。
かなり広い敷地で、空間、音響効果、視覚効果を利用した展示が行われていた。
写真撮影可能だったが、それに気づいたのはかなり終わりのほう。
CAPC現代美術館
ボルドー市街にある現代美術館。
ボルドーらしく歴史的建築物を美術館に改造している。
ここもモダンアートの美術館らしく、空間美術や音響、照明などを利用した展示が多く、
とにかく、アートって感じだった。写真は無い。
やはり現代美術は自分には難解だったが、スケールのでかさにはビックリした。
空虚な感触、サブリミナル、快楽、インパクトなど、やはりスケールはでかい。
どれも計算と情熱が注がれたものなんだろうと思った。
しかし難解だ。もっとフランス語を勉強すればよかった。アート恐るべし。
MY TATTOO TOUR 其の七につづく
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